そこにいたことをここに
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
何もかも上手く行かなくなって、すべてを忘れようと一人フランスに来た私。
「ずっと見せたかったものがあるんだ」
気がつけば彼は、そこにいた。
半歩前に立つ彼を私は知らない。知らないのに、初めて会った気がしなくて、知らないのに、知られていることに疑問などなくて。
導かれるままに、彼との旅が始まった。
話しかけるように、それでいて独り言のように、博識な彼が語る言葉に耳を傾けながら、私たちは様々な場所を巡った。時々、夜でもないのに夜空を見せてくれたけれど、呑み込まれそうなその星空を、私は嘘だとは思わなかった。
暗闇と、星々と、私たちだけがいた。
その日彼とどうやって別れたかはよく覚えていない。だけど眠りにつく時、私は確かに一人だった。
翌朝、駅で待っていた彼と共に、私たちは更に遠くへと向かった。彼の声は昨日よりも弾んでいた。
たくさんのものを見た。たくさんのことを聞いた。たくさん笑った。
笑顔を見せる私を見て、彼もまた、笑ったようだった。
私たちは天文台を訪れた。彼の見せるものではない、今の星空を見上げた。
「ずっと君と見たかった」
そう告げる彼と、並んで座って見上げた空に、二度と見ることのない今だけの景色に、
「さあ、手をつなごう」
つないだ手の、温もりに、言葉が溢れ出した。
辛かったこと、悲しかったこと、苦しかったこと。今までのこと、全部。
ずっと同じほうを向いていた、だけどずっと見ていてくれた大切な彼に、私に、しまい込んでいたことも、忘れようとしていたことも全部、泣きじゃくりながら私は打ち明けた。
抱き締める腕が温かくて、優しかった。
今までありがとう。それが彼に言った言葉だったか、独り言だったかはもう分からない。だけど彼が慈愛に満ちた顔で微笑んでいたことは確かだった。
夜が明けた時、そこにもう彼の姿はなかった。
吹きつける風に目を細めながら、私は立ち上がる。上りゆく太陽をしばらく見つめて、それから踵を返した。
一歩一歩、しっかりと、確かめるように歩み始めた。
デートと聞いていたんですけど、頭の中を駆け巡ったのはどちらかと言うとこんなストーリーでした。
妄言はさておき、慣れ親しんだ、また継続的に聞けるようになった梅原さんの美声に案内されて、美しい星空はもちろん様々な歴史的建造物も巡って、彼に何かと縁のある星の王子さまの話をして、出会えた奇跡や共にいられる奇跡を噛み締めて手を繋いで、Aimerさんのここで流すのはめちゃくちゃずるい名曲が流れ出す「フランス 星めぐりの空で」、素敵なプログラムでした。会期終盤のド平日にもかかわらず賑わっていて嬉しかったです。
エンドロールの、上へと流れる梅原さんの名前をぐっときながら目で追っていました。そうやってそこに名前が刻まれることは当たり前ではないと、改めて思い知らされた今、加えてこうした普段とは違う場所でその名前を見るのには、やはり今まで以上に特別な感慨が伴いました。
復帰おめでとうございます。
声をきっかけに様々な作品と出会うだけでなく、普段行かない場所へも出かけることになったりして、すごく生き生きと暮らさせてもらっていること、とてもありがたいなと思っています。